私は有川ひろ(旧:有川浩)の作品が好きです。
著者よりも作品で判断するタイプなのですが、
それでも彼女の作品の既読率は圧倒的に高いです。
入口は『図書館戦争』で、他にも『植物図鑑』『レインツリーの国』『空飛ぶ広報室』『キャロリング』『県庁おもてなし課』『明日の子供たち』などなど。
名前ぐらいは聞いたことがある人も多いのでしょうか?ちょっと恋愛要素があるものが好きです。
『フリーター、家を買う』はドラマが先で、あとになって彼女の作品だと知りました(でも未読)。
一番好きな話は『ストーリー・セラー』です。SideBが好き。そういえばSideAにてんかんってワードが出てきたりする(本筋とは関係ないけど)。
この間、久方ぶりに新刊が出ました。
『イマジン?』です。
すぐに読み終わりました。
感想は今回の趣旨とは外れるので、脇に置いておきます。
作品の内容とは別に、私が一番驚いたことは、
私自身が主人公に同調できなくなったことです。
基本的に、彼女の作品の主人公の性格は概ね一貫しています。
主人公は新しい世界に飛び込み、周りの人々に助けられながら成長していく。
そして何らかの理不尽の壁にぶち当たって、猪突猛進型に感情を暴露していく――。
その思いの表現の仕方に、今回初めて同調できませんでした。
良いか悪いかではありません、好き嫌いでもない。
「ちょっと待って」って言いたくなったのです。
『図書館戦争』を初めて読んだのは、中学生か高校生だったと思います。
私は概ね主人公と同じ視線で、活字を通して本の世界を体験してきました。
笠原郁が一番分かりやすいでしょうか。
新しく知った事実に素直に反応を示し、理不尽(組織の行動や合理性)に抗議していました。
今回の新刊でも、主人公が理不尽に抗議する場面があります(ネタバレはしたくないので詳細は省きます)。
その主人公の行動に対する自分の気持ちは、「まぁまぁ、落ち着け」でした。
今までの自分は「そうだ!頑張れ!がつんと言ってやれ!」という無鉄砲ヒート応援モードだったのに、
今回は「気持ちは分かるが、今じゃないんだ。ここは堪えろ、じっくり時が来るのを待て。やるときは一気に、完膚なきまでに叩き潰せ」という、
…何だろう?一段階上の状態に?上官モード?腸煮えくりかえりすぎて、逆に冷静?になってしまいました(笑)
ぼんやりとそうなった理由を考えてみました。
前回『キャロリング』あたりでちょうど大学を卒業し、
『イマジン?』で社会人3年目?という自分の状況の鑑みて、
分かりやすくいえばいわゆる「社内政治」を覚えたからではないかと思い当たりました(笑)
(私は『だれもが知ってる小さな国』『アンマーとぼくら』は未読です。)
組織の中での、自分の立ち位置。人間関係。派閥。
何かを変えるにはそれなりの努力と時間が必要です。
上手く立ち回らないと反乱分子だと思われて、却ってマイナスイメージ(笑)
そういったことを、大人になってアルバイト先や社内で肌で感じるようになった。
だから今回新刊を読んで、主人公と気持ちがズレたのかなぁと結論づけてみました。
主人公の言い分は分かるし、共感できるけど、それをただ主張するのは後々の自分の首を絞めているだけで、何も変えることはできない。
本当に理不尽を失くしたいなら、もっと根本的なところから、賢く立ち回らなくては。
だから今はぐっと堪えて、より効果的な解決方法を見つける方向にシフトすべき――。
そーんな気持ちが、ついつい湧き上がってくるようになりました(笑)
…大人になったのかもしれない、ちょっと寂しい気持ちです。
主人公が少し眩しく見える。若いなぁとも思う(笑)
この自分の気持ちの変化が、今後どういう方向に向かうのか分からないけど、
今回の出来事のことはちゃんと覚えておきたいなと思って、
ブログに書き残しておくことにします。
…不思議だな、こんなこともあるんだな。
PS.『レインツリーの国』で、女の子が「障害があるから私こんな性格なんだ」って言ったのに対し、主人公が「障害がなくても君はそんな性格だったと思うよ」って返したシーンが一番好きです。
あの場面を読んで自分は、何でもてんかんのせいにするのはやめよう、と決意しました。