人生の物事の隙間において、
時々思い出す印象深いこと。
某試験の合格ボーダーラインは、60点以上だった。
私の点数はぴったり60点だった(自己採点は61点だったのに)。
友人たちに笑い話として、披露することが多く、みんな笑ってくれた。私の望んだ通りに。
その内の一人のリアクションはやや異なるものだった。
彼女は電話越しに、「必要最低限の力で合格したんですね」と感心したように言った。
――不意をつかれた、というのはこういう瞬間を言うのかもしれない。
そんな考え方、見方があるのかと思った。
イメージとしては、コップの中に水が半分『もある』『しかない』に近い。
世俗的な表現だと、ポシティブ・シンキング、ネガティブ・シンキングだろう。
とにかく、彼女の言葉はあれから何年経ったにも関わらず、色褪せず、たまにふっと日常の何気ない瞬間に再生される。
思い出す度に、世界には色んな見方があるのだと再認識する。
彼女は決して、自分から何かを伝えるタイプではないし、聞き上手である。
それでも意見を求めれば、彼女の目線からみた独自の解釈を味合わせてくれる。
叶うなら、彼女の眼になりたい。
想像もし得なかった、世界を見せて――魅せてくれるだろう。